UPDATE:2019/03/15
強い企業といつまでも発展性のない企業の違いはどこにあるか。
私が現場を通じていつも感じるのは、「徹底力」の差です。
30名以下の企業で構想力を持ったリーダーはそんなに必要ありません。殆どの場合、社長が直接掛け声をかけているからです。
しかし、50名以上になるとマネジャーの役割が大きくなります。
社長の意図を汲み取って、全体を考えた上で、その役割範囲で現場に徹底させる、所謂マネジメント力こそが極めて重要となります。
ミドルマネジメントとは、上位概念を役割別に分解し、部下の実行ベースに置き換える、翻訳機能なのです。しかしそこが弱い。
自分で考えて、自分の言葉で伝えられない。言葉に魂がこもっていない。真剣にやり遂げようと思っていない。下手をすると、言われた事すらやらない、言い訳・かわす事の術だけが上達する。そんな実態を社長も諦めていたりします。
社長すら何時しか言わなくなる。そんな状態の企業がこの厳しい環境の中で、生き残っていけるはずがありません。商品があふれ、過当競争と言われる業界の中で、商品サービスを愚直に磨き続け、こだわり続けるオンリーワン企業とはなれません。
経営者に相談され、幹部育成を依頼されても、教育以前の問題です。
ではどのようにして、この実態を打ち破れるか。業界の中で突き抜けられるか。
一言で言うと、「徹底する風土」を染み付かせる。逃げられなくする。追い込む事です。
約束した事は絶対守らせる。その事を制度や仕組みの中に組み込みます。メインとなるのが目標管理と会議の改革です。「目標管理によるマネジメント」を会議の中で徹底的に実践、突き詰める事です。
3年単位で中期経営計画が掲げ、1年単位で年度方針・目標を設定し、半期で人事評価制度と連動し、四半期で目標を展開、それを月間で割り振って目標を立てる。その流れが全社、事業部、課、グループまで、全体と各部分・個人が納得した目標で連鎖している関係を深く結びます。
しかし、目標は上から降りてくるもの。全社は関係なく、眼の前の仕事だけを一生懸命やっている。
「どうせ頑張ったって、評価されない。」
現場はいつも被害者意識にあります。このような状態では、従業員の能力が発揮されるはずがありません。利益は現場から生み出されるのです。
目標達成と評価制度、日常マネジメントが密接に連動し、現場のもてる力を充分に引き出す仕組みが重要です。また与えられたノルマではなく、主体的に掲げる目標、そして達成するための計画を自ら立案できるということも不可欠なスキルとなります。
具体的には、達成できる計画を組織長、その部下も自ら作成し、発表(宣言)する。自律的に仮説を立てて、意識的に業績を作る組織です。
その(月間の)計画書の構成は、
①先月の振り返り、
②今月の方針・目標の確認、
③達成が確信できる戦略の立案、
④戦略を支える具体的な戦術、
⑤戦術を時系列に置いた実行計画、
⑥不測な事態の予測と対策
以上を毎月、毎Q、毎年作成し、上司とすり合わせ、会議で発表する。会議で発表した事、決めた事は絶対実行する。会議ごとに議事録を必ず作成し、何を、誰が、いつまでやるか、そのチェック方法を「コミットメントリスト」として、議事録に添付し、次回の会議で報告をさせます。
中小企業の場合、紙(データ)ベースでの記録に弱い部分がありますが、文書で残す習慣を徹底しなければ、責任の所在もあいまいになるため、マネジメントが強くなりません。
以上の事を組織内の常識にし、その中身の戦略立案力、課題解決力・対策を日常から鍛えていくのです。
計画が信じられるかどうかのポイントは、実行計画が具体的で、行動ベースに落とされている事です。抽象的な約束は絶対守られません。ゴールが明確で、やったかやらなかったかはっきりわかる事。あいまいな事は、チェックも指導も管理もできないからです。
新しい組織風土・文化にするためには、その風土・文化を体験した人材が必要となります。見た事のない世界には、誰も導いてくれません。残念ながら、内部人材からは組織変革は不可能です。この領域も経験豊かな、信頼できる外部パートナーが必要となります。
【コンサルタントプロフィール】
和田一男 (株式会社ブレインパートナー 代表取締役 組織変革・営業変革コンサルタント) 北海道小樽市出身。(株)ヒューマン・キャピタル・マネジメント取締役。大学卒業後、1985年(株)リクルート入社。2000年独立し、(株)ブレインパートナー設立、代表取締役就任。経営力強化、実行力強化支援、営業力強化コンサルティング、実行機能としての組織構築、組織変革コンサルティング、人材育成、人事評価制度構築、目標管理制度運用支援を行っている。著書「30歳からの営業力の鍛え方」(かんき出版,2006年)、「ドラッカー経営戦略」(明日香出版社,2012年) |