Columnコラム

【経営・戦略】「働き方改革」の間違った捉え方

UPDATE:2018/11/16

毎日のように新聞で残業削減が話題になっています。確かに、極悪な長時間労働も存在するようなので、是正の必要性を否定はしません。しかし、本当に問題となるような長時間労働はそんなに多いのでしょうか?「働き方革命」が「働かない革命」になってはいないでしょうか。このままでは「ゆとり教育」の働き方編になってしまい、将来禍根を残すのではないかと危惧しています。あまりにも過敏になりすぎ、仕事の本質を見失っていないか心配です。(この3年は人件費総額が減っているので、経団連の思惑もあるように思われますが)

仕事とは本来、お客様に特別な価値を提供できるようにするために創意工夫するものです。仕事を減らすことがマネジャーの仕事ではなく、価値を高めるために仕事を創り出すことが本来のマネジャーの仕事です。内向き志向でお客様を無視すれば、仕事のこだわりを捨て去れば、いくらでもNO残業は可能です。
一部の製造業ではまだ生産性向上が必要な現場があるでしょう。しかし、10%、20%削減する事よりも、50%、もしくは2倍以上と根本から、今後は人工知能とロボットが補完してくれるはずです。「先進国における中心的な課題は知識労働の生産性向上です(「明日を支配するもの」ドラッカー 168P)」。そして、ドラッカー氏は、「知識労働の生産性を向上させる条件は6つ挙げている。

① 仕事の目的を考える。
② 働く者自身が生産性向上の責任を負う。自らをマネジメントする。自律性を持つ。
③ 継続してイノベーションを行う。
④ 自ら継続して学び、人に教える。
⑤ 知識労働の生産性は、量よりも質の問題であることを理解する。
⑥ 知識労働者は、組織にとってのコストではなく、資本財であることを理解する。知識労働者自身が組織のために働くことを欲する(「明日を支配するもの」ドラッカー 189P)。

量より質です。時間より成果です。コストではなく投資です。だからこそ、人財への教育投資も必要なのです。
効率性の意味を考えたいと思います。効率性の追求は、一定のゴールに向かって、無駄をなくし、最小の資源で到達することです。どんなに効率性を追求しても、ゴールそのものは大きく(高く)なりません。個人の働き方や会社内側の価値であって、社会やお客様に対して、差別化や優位性や感動を創り出すこととは次元の違うことです。現代の仕事のマネジメントにおける重要課題は、属人的な仕事をいかに標準化するかです。しかし、標準化も同じ意味です。標準化とは切り刻んでパターン化し、誰でもできるようにすることです。誰でもできることに特別な価値はありません。効率性は時間(資源)を創り出すという観点で、有効性を創り出す(成功確率の低いイノベーションの)ための手段であると考えます。しかしその創り出した時間を知識労働者はどれだけ有効に活用しているでしょうか。

効率化の結果で、「出来ません」「対応していません」「時間がかかります」では、普通以下のサービスしか提供できません。お客様は「普通」を買いません。強い企業、伸びている企業は、現場の対応力が違います。「そこまでやってくれるのか」というところまで対応しているので、ファンになります。もちろんメリハリがありますが、こだわりを捨てたら普通の会社になります。「成果とは外の環境に対する貢献である」byドラッカー。決して組織の中の優先順位ではありません。無理難題や様々な苦労を乗り越えたところに、顧客満足(感動)、その会社の強さ、社員の成長、達成感があると思います。創意工夫の余地があるから仕事にモチベーションを感じるのです。自らの意志で働いている人は疲れません。

これからの企業の生き残る条件は、「最高の知識労働者を惹きつけ、とどめる能力こそ、最も基礎的な条件となる(「明日を支配するもの」ドラッカー 188P)」。若いうちに思う存分働ける会社、仕事を通して自分を鍛えられる会社、働きたいだけ働ける会社の登場を心待ちしています。(もちろんちゃんと上限はあるけれども・・・)

 

【コンサルタントプロフィール】

wada 和田一男
(株式会社ブレインパートナー 代表取締役 組織変革・営業変革コンサルタント)
北海道小樽市出身。(株)ヒューマン・キャピタル・マネジメント取締役。大学卒業後、1985年(株)リクルート入社。2000年独立し、(株)ブレインパートナー設立、代表取締役就任。経営力強化、実行力強化支援、営業力強化コンサルティング、実行機能としての組織構築、組織変革コンサルティング、人材育成、人事評価制度構築、目標管理制度運用支援を行っている。著書「30歳からの営業力の鍛え方」(かんき出版,2006年)、「ドラッカー経営戦略」(明日香出版社,2012年)

 

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