UPDATE:2009/03/02
経営者は「事業ビジョン」と同時に「組織ビジョン」を持つ必要がある。
事業ビジョンとは「どんな顧客にどんな価値を提供し、どう儲けるか」と言うことで、
組織ビジョンとは「どんな価値観を持つ人たちが何をモチベーションにしてどう頑張るか」と言うことである。
事業家は自分のやりたいこと、儲けることに集中するが、
経営者には企業理念を実現するためのステークホルダー全体の長期的利益向上の視点が必要である。
環境の変化の激しい現在においては「儲け方」の賞味期限は非常に短い。
かつてのように生産設備や過去の遺産の財務的能力だけでは未来の戦闘能力を図り知ることはできない。
常にビジネスモデルを変化させる人材と組織能力にこそ企業の本質的なポテンシャリティが表れる。
すなわち学習する組織作り、変化対応能力、スピードこそが戦闘能力の要因となる。
そのような戦闘能力実現のために、従業員が単なる労働者からヒューマンキャピタル(人的資本)として活躍してもらうには
「事業(仕事)への共感と組織(職場、仲間、遺伝子)への共感」が必要である。
よって、経営者の組織ビジョン「こんな会社にしたい」という強い思いが最も重要となり、
その強い思いが人事戦略の根幹になるのである。
具体的に採用の観点から見れば、変革の時代には企業にとって外部からの優秀な人材の獲得が重要である。
しかし、昔からカネで採った人材はカネで出て行く、不満で辞めた人材を採ればまた不満を持って出て行くと言われ、
採用の際にも「ビジョンの共感性」が最大の鍵となっている。
また、優秀な人材のリテンション戦略(引き留め、囲い込み)の観点でも
「組織ビジョンの浸透とその実現に向けた自己学習の場の提供」が鍵である。
すなわち、人材の成長以上に魅力的で常に成長の機会が提供される組織作りである。
また、人事制度においても「人を変えるのではなく、組織ビジョンに沿って変わりたくなるような仕組みをいかに作るか」が鍵となる。
そのようにして、経営者がしっかりと組織ビジョンを掲げ、人材を通してその企業の戦闘能力を高めていく。
そうして、「事業の成長が人材の成長につながり、人材の成長が会社の成長」につながっていれば理想的であろう。