UPDATE:2009/02/16
「ナレッジマネジメント」という言葉が一般化してきたが、まだまだ成果を出しているところはほとんど聞かない。
その本質を解き明かし、特に外部化につなげるケースに絞り、多くの失敗を生む要因を明らかにする。
ナレッジマネジメントとは
最近「ナレッジマネジメント」という言葉が至る所で使われ、やっと市民権を得てきた感じがある。
しかし、経営手法と理論だけが先走りしてしまうと、導入の努力ばかりかかり、成果が見えづらくなってしまうことが多い。
「ナレッジマネジメント」という概念は、元来、80年代に日本の組織の強さと言われた組織ノウハウの共有に端を発し、
90年代のアメリカの研究で体系化され、ITの発達と共に、イノベーションを継続するためになくてはならない経営手法に
なってきたものである。
陥りやすい傾向に、その手法が当初は手段であったのに、努力しているうちに目的化し、
現場での成果やお客様への貢献が置き去りにされてしまうことである。
「ナレッジマネジメント」はナレッジカンパニーへ変革するための手段である。
新しい価値創造を生むため、競争力を上げる為、イノベーションを続けるため、経営資源を集中化・効率化するため、
顧客への貢献を高めるため、経営のスピードを上げるためなどが主な目的である。
今回はその中でも特に、経営資源の集中化・効率化に焦点を当てて考えてみたい。
ナレッジマネジメントの手法
コスト競争に巻き込まれている、新しい発想が現場から生まれない、従業員の成長感がない、仕事がマンネリ化している、
という症状はないだろうか。
そのような組織では、従業員は努力していても、何年も同じ仕事を続けている場合が多い。
3年前も1年前も半年前もやっている仕事が変わらない
優秀な成績をいつもあげる人材はいるのだが、極めて属人的で、他の人は「あの人は特別だから」と諦めている。
事業を取り巻く環境、(他業界からの参入など)競合相手は激しいスピードで変わっているのに、
やっている仕事に変化がなければ、置いていかれ、勝ち目がないのは眼に見えている。
どのように手がけたら良いだろうか?
1)先ずは経営トップからのスコープ(展望)とビジョンを指し示すこと。
それにより何が重要で優先順位が高いかを個人個人で明確にしてもらう。
2)個人知を組織知化する。
個人の中で眠っているナレッジのうち組織で共有したいテーマを絞り、洗い出す。
3)暗黙知から形式知へ。
属人的な経験による「あの人だからできる」、あのチームだけいつも成績がよいなどというノウハウを誰でもできるように体系化、
マニュアル化する。
4)全員ができるようになったら、社員をより重要な仕事に向け、そのレシピ(マニュアル)を活かし、
アルバイト・パート化、アウトソーシング化する。
という手順をとる。
そうして同じ業務に対する人件費を流動化しながらも、社員のレベルを高めていくことが可能となる。
何を外部化していくか
その後、仕事の外部化をどんどん促進し、効率化していくのであるが、気をつけねばならないことがある。
それは、何を内部でやることにこだわり、何を外部化していくかということである。
面倒で地味な作業は外部、提案や企画業務は内部などと簡単には割り切れない。
それは自社の強みが何から生まれているかという競争力の源泉との関係である。
実は競争力の強い企業は他者には簡単にはまねのできない組織知を持っている。
それはその組織の構成員にも自覚していない暗黙知かもしれない。
それがわかりやすければ、他社でも真似ができるからである。
その暗黙知は意外と裏方の地道な努力に起因していることも多い。
配送作業員のミスのない包装と納品、納品時のちょっとしたお客様の気付きを聞き取り反映させる細かな対応、
納品後の顧客対応で示す心からの誠意とその後の営業マンフォローによる安心感などをお客様は支持しているかもしれない。
特に、バリューチェーンという仕事のプロセスの境界線に隠れている顧客接点・関係性が重要なのである。
配送・物流、アフターメンテナンス、営業の外部化・代理店化による弊害、失われる財産も大きいのである。
外部の業者は指示通りやってくれてもそれ以上は望めない。
ましてや社内で内製化できないことを外部化するのは要注意である。ただ安ければよい、効率的であればよいというのは安易である。
自社が何で戦っていくか、どこを強みとしてこだわるか。
その企業らしさを追及していくことがナレッジマネジメント推進の上で重要な戦略となる。